『ギャングース』は漫画というメディアをよく理解している
『ギャングース』は、タタキ屋(強盗)漫画という、珍しい設定の作品。
くどいくらいメッセージ色の強い作品で、淡白な日常系漫画好きにはまったく薦められない漫画である。
アンダーグラウンド系によくある見切り発車のB級作品とは違うなと思ったが、構想2年とあり納得。連載開始前に13話分のネームを作成してあったそうだ。
主人公は年少上がりのデブ。メカが得意。ドラテクのすごい吃りのノッポと頭の切れるイケメン(B専)の3人揃って「バックスカーズ」。皆、幼少期に虐待を受け、背中に大きな傷を背負っている。
犯罪者の汚い金のみをタタき、自分たちのような子供を世界からなくすために、日本を買うと大言壮語を吐き散らし金を稼ぎまくる。
いわゆるダークヒーローもののクライムストーリー。
週刊モーニングで連載していた。全16巻。
キャラクター作りに顕著だけれど、漫画というメディアをどれだけ効果的に使えるかという試行錯誤が行間から伺え、胸が熱くなる。
鈴木大介氏のルポタージュを原案から、実際にあった犯罪を元にストーリを制作しているため、漫画的な勢いや小手先だけではなく、ひりつくようなリアリティがそこにはある。
肥谷先生の画風は井上雄彦先生がベースだが、デフォルメを強くしてあることで、リアリズムあるテーマの中で極端にコミカルな漫画表現をミックスすることに成功している。何を言ってもこの漫画を評価している最も大きな要素はそこである。
さらに、丁寧な漫画的王道展開、個性的なキャラクター、芯の通ったテーマが揃っていてつまらないわけがない。
このフィクションとノンフィクションの奇跡的なバランス感覚は、なかなか他の漫画では味わえない。
中盤失速気味だったのは少しもったいないが、それを補ってあまりある魅力がこの作品にはある。
ただ、単行本の第1巻の、主人公がアップで鼻水たらしてる表紙は、漫画の売上のスタートダッシュに大きく関わる20~40代女性からの批判が少なくなかったようだ。
2018年には入江悠氏監督で実写映画化も予定している。
この機会にぜひぜひ。
Twitterの関連ツイート
昨日の打ち合わせで、担当さんが「ギャングース8巻校了してたら、面白くて何回も笑った」て言ってて本当に嬉しかった☆やっぱり漫画は“笑い”だと思いました。読むと元気になってもらえるように頑張ろう!
— 肥谷圭介 (@hiyagoose) April 30, 2015
一貫してギャングースのメインテーマは、防犯情報ではなく子どもの貧困と格差社会でした。言葉になりがたし思いは例によって漫画にあるまじき長いあとがきを単行本最終巻に寄せたいと思いってます。覚悟せよウザいぞ~
— 鈴木大介 (@Dyskens) January 6, 2017
ギャングース最終巻、なっなんなんだこの良い話は……ってなった。フィクションだからできる終わり方にしたことで、なら現実はどうする? って思えるという意味ではすごかった。それと主人公のカズキの、ひし型な豚さん的なキャラデザインは改めて素晴らしかったですね。みんな読め。
— ezory (@ezory) April 21, 2017
ギャングース最終巻のたたみかけ方ヤバすぎるわ
久々に漫画で涙したわ— でぶ (@debuudeb) April 28, 2017
稀代の漫画「ギャングース」が完結。なかなか知り得ない社会の裏側で生きるひとびとの存在を、社会から見放された世界を生きる子どもたちを通じて知ることができる。最終(16)巻だけ読んでも考えることが多く、大きすぎて心がつらい。 https://t.co/RlQjVGDW7T
— 工藤啓@若者を応援するNPO (@sodateage_kudo) April 26, 2017
ギャングース最終巻。あらゆる伏線を完璧に回収する怒涛の完結編。カルロス登場シーンに鳥肌。これほど緻密に考え抜かれた作品だったとは…控えめに言って2010年代最高の持って行かれる漫画。鈴木さん肥谷さんお疲れ様でした。肥谷さんに無理を言って描いてもらったヤンキー本の表紙が誇らしい。
— 斎藤環 3.15発売「まんが やってみたくなるオープンダイアローグ 」 (医学書院) (@pentaxxx) April 27, 2017
ギャングース最終巻読んだ。墓まで持って行きたい作品がひとつ増えた。
— # (@iamazah) May 1, 2017
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